医療機関の方へ
慢性疾患を有し、小児期から継続した医療を必要とする患者さんの、小児科から成人診療科への移行には、医療機関間の連携が重要です。
当センターは、移行期医療に関する情報提供や相談支援、地域連携の推進を通じて、患者さんが成人後も適切な医療を受けられる体制づくりを支援してまいります。関係医療機関の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
群馬県移行期医療支援センター
センター長
移行期医療の必要性
近年の小児医療の進歩により小児期発症慢性疾患患者の多くが成人期を迎えるようになりました。大変喜ばしい一方、新たな合併症や成人期特有の疾患発症の可能性を抱えながら小児科で思春期・成人期を迎える患者も多くなっています。 このような方々は、おとなになってからも継続して医療を受けながら就職・結婚・出産といったライフイベントに向き合うことになりますが、小児診療科だけで診療を続けることは、必ずしも最良の医療を提供できているとは言い切れず、成人医療に移行するための支援が必要となっています。
医療体制・診療上の課題
- 小児診療科と成人診療科との間における連携体制が十分に構築されていない
- 成人診療科医の小児慢性特定疾病等の小児特有の診療経験・知識が十分にない場合がある
- 複数の成人診療科への受診が必要となる場合、主科となる診療科の選定や併診体制が構築されていない
- 急性期医療が必要となった場合の受け入れ(バックベッド)が十分に確保されていない
- 患者・家族が成人診療施設を知らないことによる不安
- 成人診療科医との信頼関係構築
- 転科可能な成人診療施設の不足、交通機関等アクセスの問題など
自律・自立支援の課題
- 小児期は保護者と医療者によって治療方針が決定される場合が多く、患者自身の意思決定の力が形成されにくい
- 小児期は保護者による健康管理が行われやすく、セルフケア能力が形成されにくい
- 成人診療科へ移行後の診療体制等について十分な情報提供が行われていない など
移行期医療支援とは「小児科」から「成人中心の医療」に移行するプロセスの支援

トランジション(移行)は、「小児期発症の慢性疾患を持つ患者が小児を対象としたヘルスケアから成人を対象とするヘルスケアへ切れ目なく移る計画的、継続的、包括的な患者中心のプロセス」を意味し、3本の横矢印で示した、①自律・自立、②診療スタイルの移行、③診療体制の移行が柱となる。成人移行支援はトランジションのための支援で、適切で必要な医療を切れ目なく提供する、その人らしい生活を送れることを目的とし、自律・自立支援、転科支援などによる診療体制の整備が含まれる。自律・自立支援には、自己管理(セルフケア)、自己決定(セルフアドボカシー)、ヘルスリテラシー獲得のための支援や就学・就労支援が含まれる。
日本小児科学会移行支援に関する提言作成ワーキンググループ
「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」
①自律・自立支援
- 患者が自分の健康状態を説明できるようになるための支援(セルフアドボカシー)
- 病気に関する必要な情報を集め、活用できるようになるための支援(ヘルスリテラシー)
- 日常生活や病気に関する管理を自ら実施できるようになるための支援(セルフケア)
- 多職種チームによる移行支援プログラムを実施し、患者の自律・自立に向けたサポート

②診療スタイルの移行 ③診療体制の移行
- 患者の自己決定権を尊重し、医療の主体を家族から患者本人に移すことを目指す
- 医療継続のための診療体制の整備・連携体制の構築
- 患者の個々の病気や状況に合わせた移行時期、移行パターンの検討
- 患者の適した診療科・医療機関・医療形態等の診療体制を整備
- 成人診療科を受診後3~6か月後、小児診療科を受診し、移行のフィードバックを行う


移行期医療に関わる方々へ
小児診療科の方へ
- 円滑な移行のためには、患者の自律・自立支援が重要です。「自分ごと」として患者が自分の健康管理ができるように医師・看護師・薬剤師・心理士・ソーシャルワーカーなどの多職種による支援が必要となります。
- 患者が安心して転科できるよう、成人診療科との連携を進めていくことが大切です。
成人診療科の方へ
- 事前に小児診療科と連携して、患者の自立状況などを把握することが必要です。
- 転科後に病状の悪化や診療の中断が起きる可能性があることを理解した上で、診療を継続してください。
- 複数の診療科を受診する方の場合、それぞれの診療科との連携も必要となります。